はじめに

岡山県立大学情報工学部情報通信工学科で担当している講義「Webアプリケーション」のために執筆し始めた教科書である。ある程度汎用的に、大学等での講義に使用できる形になってきたので、このような形で公開することとした。

Webは1989年、欧州原子核研究機構(CERN)に在籍していた科学者Tim Berners-Leeによって開発され、その後目覚ましい発展を遂げてきた。現在、Webというシステムの社会的重要性はあえて私が語るべきことではないが、一方で、Webが現代の情報システムのあまりに多くの部分に関わることになったことで、Webの技術が多様化し複雑化したことは間違いない。加えて、インターネットを始めとして関連している情報技術も際立って多いし、歴史的な事情によるわかりにくさも少なからずある。

私自身、1991年頃にWebに最初に触れて以来一貫してWebは興味の対象にあり、偶然ではあるが、技術者としての成長に伴ってWeb技術の成長を体験してきた。自身がWebを理解する上で、このことは結果的に幸運であったと思う。そのような体験を基に、情報工学の学生諸氏が現代のWebを理解するための一助となるよう、項目を取捨選択したつもりである。

同じ意図を持って書かれた書籍に山本陽平氏の「Webを支える技術ーHTTP、URI、HTML、そしてREST」(技術評論社、2010年)がある。この書籍からは多くの示唆をいただいたし、そもそもこの書籍がなければ本書を執筆しようとしたかは甚だ疑問である。あえて同種の書籍を執筆しようと思ったのは、学生諸氏を読者とするとき、山本氏の書籍からいくつか項目を足し引きしたいと考えたからである。例えばAjax、クッキー、TLS、セキュリティ、アクセシビリティなどである。

他にも多くの書籍やWebページを参考にして、本書の執筆を行なっている。これらの文献、およびその作者に心よりオマージュを捧げたい。

言うまでもないが、本書の内容に含まれる間違いや不明瞭さは、すべて私の理解の足りなさ、文章の稚拙さによるものである。お気付きの点があればご指摘、ご意見をいただければ幸いである。本書のソースコードはGitHubにて公開しているので、そちらにプルリクエストを送っていただくのも大歓迎である。

構成

日本の大学での講義を意識し、11章から構成されている。いくつかの章は分量が多いので、だいたい15週の構成になるのではないかと思う。

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